元書店員の本屋の話
今回は書店員をしていた頃の書店事情についてのお話です。
堅苦しいような書き方しても面白くはありませんし、私にそんなことは出来ませんので、
ざっくばらんに時にはおちゃらけながら当時の事を書いていこうと思います。
出版社の皆さま、著者の皆さまをはじめ、書店に興味ある方に
書店のことを少しでも知っていただければ幸いです。
さて、第4回のテーマはこちらになります。
本日のテーマ
フェアで売場を華やかにする
1.フェアとは?
2.フェアの種類
3.出版社さんのフェアを受ける場合・断る場合
4.エピソード「フェアやりません?やりましょう!やろう!」
連載一覧
・【4冊目】フェアで売場を華やかにする
ご注意
- 当記事は過去に私が書店で経験した内容になります。
全国の書店がここに書かれていることと同じとは限りません。
- 出版業界の情勢上、批判的なことを書くこともありますが、
他の書店や書店員を否定・貶める意図はございません。
- 以上をご理解の上、数ある情報のひとつとしてお読みくださいませ。
フェアで売場を華やかにする
1.フェアとは?
フェアとは人目につきやすい特設コーナーで大々的に本を展開することで、
「春の新社会人フェア」、「秋の夜長読書フェア」などはよく見かけると思います。
大体普段とは違う場所に展開しますので、
普段読まない層に手を取ってもらえる機会が増えます。
またフェアは特別感のある展開方法です。
ですから、通常の販売方法より訴求力を上げることが出来ます。
これらの理由により、フェアは本の売上を上げる重要な要素となります。
私の店ではそれぞれのジャンル毎に
規模を問わず何らかのフェアを最低1つはやっておくのが一応のルールでした。
2.フェアの種類
フェアと一言に言っても発案・企画者が違うだけで、その内容は大きく変わってきます。
フェアの発案・企画者は主に出版社、本部、店舗、オリジナルの4つありますが、
それぞれの種類や傾向についてご紹介します。
1.出版社のフェア
書店員が一番利用する機会が多いのが「出版社のフェア」です。
営業さんが新刊の案内に併せて
「今こういう企画があります、フェアやりませんか?」とご提案してくれます。
郵送・FAXのダイレクトメールで案内が届くこともあります。
出版社のフェアは基本的にコラボレーション企画等の連携がない限り、
「自社の本だけで構成されたフェア」です。
ひとつの出版社だけという制約はありますが、
パネルやPOP等の拡材は種類多いので、売場を華やかにしやすいフェアです。
2.本部のフェア
次に本部のフェアです、本部のフェアは基本的に提案ではなくて命令。
「やりませんか?」ではなく、「やりなさい」という強制力を持っているフェアです。
本のラインナップもほぼ決められています。
一時期は全部やらなくてもいいって言われて身軽だったのですが、
最後の頃は強制に戻って仕方なくやっていました。
なぜ仕方なくなのか?という話なんですが、
本部のフェアはラインナップが有名どころの定番な本ばかりでした。
なので、フェアなのに目新しさが全く無いんです。
前述通り特別感があるのがフェアですが、ラインナップが定番な本では、
特別感も薄らいでしまいます、というのが私の考えです。
普段読まない層に定番の本を薦めるというのは間違ってはいないと思いますが、
それでも「うーん…」という感じでした。
系列店みんなこぞって似たような本でフェアをやるという事に疑問を抱いていましたので、
私はあまりやりたくなかったです。
この辺の考え方については追々書きます。
3.店舗のフェア
続いて店舗のフェアです、本部から「こういうフェアをやりなさい」という指示を受けて、
店舗側が選書するフェアです。
「誰かが受賞した」、「誰かが就任した」、「誰かが亡くなった」など
こういうテーマのフェアは主に店舗のフェアでした。
拡材が用意されている場合もあれば、用意されていない場合もあります。
4.オリジナルのフェア
最後にオリジナルのフェアです。
担当の書店員が自分でテーマを決め、選書し、POPをオリジナルで作るフェアです。
よほど過激なテーマでない限り、自由にやれたので毎月楽しくやっていました。
私は他人様にお見せ出来るような手書きのPOPを作れないので、
パソコンで作っていました。
ただ、お店にあるパソコンはスペックが高くない上にPOPを作成するソフトも
化石のようなものだったので、自宅で作っていました。
もちろんタダ働きでしたが、それが一番満足出来るものが作れる方法だったので、
仕方なかった…という感じでしょうか。
3.出版社さんのフェアを受ける場合・断る場合
毎月、数ヶ月に1回、半年に1回、年に1回など
営業さんというのは、来てくれる頻度というのが異なり、一番多いのは毎月です。
足繁く来てくださる営業さんと年1回に来てくれる営業さんが
それぞれ「フェアやりませんか?」と提案されてどちらかひとつしか出来ない場合、
私も人間ですから、やはり足繁く来てくださる営業さんの方を優先してしまいます。
しかし、足繁く来てくれるからと言って贔屓してフェアを受けていると
他の出版社さんに示しがつきませんので、適度にお断りしたりもしてました。
4.エピソード「フェアやりません?やりましょう!やろう!」
前述通り、出版社が提案するフェアは自社のもののみです。
規模にもよりますが、5種類~30種類の本を1冊~10冊単位で注文を取ることが出来るので、
手っ取り早く多くの本を注文する手段としてフェアはかなり有利な方法と言えます。
それ故に、どうしても強引な営業さんというのはいらっしゃいます。
「この場所でフェアやりませんか?いつ空きますか?」と執拗に聞いてくるのが
私の中ではよくあるパターンでした。
久しぶりですとか、改装しましたね!とかそういう雑談をすっ飛ばして、
いきなりフェアの提案してくる営業さんとかもいらっしゃいました。
編集後記
第4回の今回は「フェア」について書きました。
最後あぁいうことを書きましたが、
出版社さんだからこそ出来るフェアというのもあるので、説明を聞くのは結構楽しみでした。
私はカタログ眺めてるだけで楽しい人なんですが、あの感覚にちょっと近いかもしれません。
さて、次回は書店にとってかなり重要な作業だと私は思っていますが、
「返品作業」について扱います。
よろしければ、次回もお付き合いください。
ご覧いただきありがとうございました。