元書店員の本屋の話
今回は書店員をしていた頃の書店事情についてのお話です。
堅苦しいような書き方しても面白くはありませんし、私にそんなことは出来ませんので、
ざっくばらんに時にはおちゃらけながら当時の事を書いていこうと思います。
出版社の皆さま、著者の皆さまをはじめ、書店に興味ある方に
書店のことを少しでも知っていただければ幸いです。
さて、第7回のテーマはこちらになります。
本日のテーマ
コンビニ化しない為に抗ったこと
1.コンビニ書店
2.目的が無いと行かない店だからこそ
3.自分の意思で売場を作る
連載一覧
・【7冊目】コンビニ化しない為に抗ったこと
ご注意
- 当記事は過去に私が書店で経験した内容になります。
全国の書店がここに書かれていることと同じとは限りません。
- 出版業界の情勢上、批判的なことを書くこともありますが、
他の書店や書店員を否定・貶める意図はございません。
- 以上をご理解の上、数ある情報のひとつとしてお読みくださいませ。
コンビニ書店
前回、『コンビニ化する書店をどう考える?』という記事を書きました。
要約して書くと、
本が売れないからランキング上位の本を置く。
ランキングを調べて置くのは容易かつ簡単かつ売上を上がる期待値が高い為、
みんな同じことをする、させられている。
それ故に書店毎の個性が無くなり、コンビニ化している。
それってどうなのよ?
というようなことを書きました。
そして今回は『コンビニ化しない為に抗ったこと』というテーマで書いていきます。
目的が無いと行かない店だからこそ
私はコンビニ書店になりたくないと思っていましたが、根底にあるのは書店の立地です。
1.書店激戦区
私が勤めていた書店(以下 T書店)のエリアは書店激戦区でした。
その数、5~6つほどでしょうか、古本屋を加えればもう少し多いです。
どれも聞いたことある書店ばかりで、あっちこっちに乱立しているんです。
そして、その中で私のいた書店は一番立地条件が悪いところでした。
2.駅から歩く
そのエリアには駅がふたつありました、その区間は歩いて行ける距離です。
T書店はその駅と駅の中間に位置しているショッピングセンターの中にあります。
つまり、駅から歩くわけです。
5~6つある書店のうちほとんどは駅チカにある中で、
T書店だけがふらっと行くにはしんどい書店(=目的が無いと行かない書店)なのです。
そこまでの通路に屋根があるわけではありません。
夏は汗をかくでしょう。冬は寒いでしょう。雨の日は足下が悪いでしょう。
横断歩道もありますから、待つ時間もありましょう。
仕事終わりに行きたいか?と聞かれれば悩んだ末に諦めるような距離です。
3.求められているものはここにしかない個性だと信じた
書店が乱立している中、
アクセスが悪い書店というのはそれだけでかなりのハンディキャップです。
行くのは面倒だったら、行きやすい書店に行けばいいだけです。
駅チカにとても大きい書店がありましたから、恐らくそこで完結出来ると思います。
「じゃあ、それでもT書店に行く理由はなんだ?」と考えました。
駅にコンビニがあるのにわざわざ5分10分歩いた所にあるコンビニには行きません。
であれば、少なくともコンビニ書店は求められてはいません。
私の出した結論は、
「求められているものはここにしかない個性」だと信じたわけです。
自分の意思で売場を作る
「ここにしかない個性を作る」と決めた私ですが、個性を出すのはとても苦労しました。
コンビニ書店にさせない=売れてる本を置かないというわけではありません。
売れてる本はやっぱり売れますから、置かなくてはいけません。
建売れてる本を置きながらもここにしかない個性を出しつつ、
売上をそこそこ確保する。
とても難題でした。
1.会社の拡材・フェアでお茶を濁すことををやめた
会社の拡材やフェアに丸投げしてお茶を濁すのをやめました。
幸いその頃会社のフェアは「やってもいいけど、やらなくてもいい」という方針でしたので、
必要に応じてオリジナルのフェアに差し替えていました。
…まぁ、「やっぱり絶対やれ!」と言われるまで100%差し替えていましたが。
その辺の話は【4冊目】フェアで売場を華やかにするに書いてあります。
2.中の人を自己主張する
中の人…つまり私ですが、自己主張することにしました。
幸いなことに私は1人しか居ませんので、ここにしかない個性になり得ました。
具体的には「こういうことを考えてこの本置いてみたよ」
「この問題を解決するのはこれだと思うけど、どう思う?」
というようなPOPを作ったりしてました。
3.本の高さを揃える、色を揃える
ここにしかない個性というには大したことはないのですが、
売場にある本の高さを揃えたり、色を揃えたりしました。
本の高さを揃えるのは、
背の高い本の間に背の低い本があるとその本が埋もれてしまうからです。
色を揃えるのは、「あれは確か赤い本だった!」っていう時、
色が揃ってると探しやすいなって思ったからです。
あと見栄えがいいです。
正直、売上がどう変わったか一概に比較出来ませんでしたし、
自己満足でしかなかったと思いますが、色んな手を使って整ってる売場を作りました。
編集後記
第7回の今回は「コンビニ化しない為に抗ったこと」について書きました。
ひとつひとつは取るに足らない微々たるものだったと思います。
それでも私は書店が乱立する中でわざわざ自分の所を選んでくれたわけですから、
何か出来ないかとずっと考える日々でした。
割に合う仕事ではありませんでしたが、それでも楽しかったです。
それは今でも強く思います。
さて、次回は「本は定価、広告は麻薬」について扱います。
よろしければ、次回もお付き合いください。
ご覧いただきありがとうございました。